睡眠時無呼吸症候群とは?
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)は、睡眠中に呼吸が何度も止まったり浅くなったりする疾患です。呼吸の停止が10秒以上続き、それが一晩に30回以上起こるような場合には、重度の無呼吸と診断されます。
呼吸が止まると、体内の酸素が不足し、脳が「窒息している」と判断して覚醒します。これを繰り返すことで睡眠が浅くなり、熟睡できなくなります。結果として、昼間の強い眠気や集中力の低下、倦怠感など、日常生活にさまざまな悪影響を及ぼすようになります。
いびきが起こる原因
いびきは、睡眠中に舌やのど周辺の筋肉が緩み、気道(空気の通り道)が狭くなることで発生します。空気が狭い気道を通る際に粘膜が振動し、音として聞こえるのがいびきです。特に仰向けで寝ていると、重力で舌が喉の奥に落ち込みやすく、気道がさらに狭くなるため、いびきが起こりやすくなります。また、肥満や飲酒、加齢、鼻づまりなどもいびきの原因になります。
歯科医院で行う睡眠時無呼吸症候群の治療法「スプリント療法」
睡眠時無呼吸症候群の治療法のひとつに、歯科医院で行う「スリープスプリント療法」があります。これは、就寝中に装着するマウスピースを使って、下あごを前方に軽く移動させることで、舌の位置を変え、気道(空気の通り道)を広げる治療法です。
いびきや無呼吸の程度が比較的軽い方に向いており、持ち運びやすいので出張や旅行先でも使用しやすいのが特長です。CPAP(シーパップ)と呼ばれる機械による治療と比べて装置がコンパクトで、違和感も少なく、日常生活に取り入れやすい点が支持されています。
睡眠時無呼吸の改善には医科と歯科の連携が重要
医科:CPAP(シーパップ)療法
歯科:スリープスプリント療法
睡眠時無呼吸症候群の治療では、原因に応じた多角的なアプローチが必要です。たとえば、肥満が原因の場合は減量、鼻づまりがある方には耳鼻科での治療、顎の骨格に問題がある方には口腔外科や矯正治療などを行うことがあります。また、症状の程度によっては、睡眠中に気道を広げるためのCPAP(シーパップ)療法や、スプリント療法が有効です。軽症〜中等症の方や、CPAPが合わなかった方には、歯科医院で作製するマウスピース(スリープスプリント)治療が適応となる場合があります。
マウスピースを使った治療を受けるには、まず専門の医療機関で「終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査」を受け、医師による正式な診断を受ける必要があります。そのうえで、「歯科医院でのマウスピース治療が必要」と判断された場合に限り、マウスピースを作製することが可能です。
睡眠時無呼吸症候群の治療で使用するマウスピースは、下顎を前に出した状態で固定して作製します。使用中に痛みや噛み合わせの異常、筋肉や関節への影響がないかを確認し、効果が不十分な場合は再度調整します。マウスピースが安定した後には、再び医師による効果の確認を行い、必要に応じて再調整を行うことが大切です。 このように、医科と歯科が連携しながら継続的に管理していくことが、効果的な治療につながります。